いつも通りの待ち合わせ場所に来て、无限大人と挨拶を交わす。でも、今日はどこへ行くのか聞いていなかった。駅に行くのかと思ったら、无限大人は街の方へ歩こう、という。
「どこのお店へ行くんですか?」
「はっきりとは決めていないんだ。君はどこへ行きたい?」
「えっと……」
逆にこちらに聞かれてしまって、困る。行きたいところ、と言われても咄嗟に出てこない。
「あ、ショッピングモール、行きますか?」
「では、そうしよう」
「はい」
駅前で遊びに行くとなるとそこくらいしか知らないので提案してみたけれど、はたして无限大人は普段行くんだろうか。なんとなくイメージがつかない。小黒と行っているかもしれないけれど。
「ここ、新しいですよね。お店もおしゃれなところがたくさん入っていて」
「うん……できたのは一年前だったかな。以前あったショッピングモールがなくなったから……」
无限大人がなぜか気まずそうにそう言った。何が気まずいのかよくわからないけれど、とりあえず一階から気になるお店を見て回ろうかということになった。今日は二人きり、と意識してしまって、服装やメイクにも気合を入れてしまった。お店の壁に設置された鏡に、私と无限大人が映る。私は、彼の隣に立つに相応しい女性になれているだろうか。わからない。並ぶのに必死で爪先立って背伸びをしている私が彼の背中を目で追う姿しか見えない。
ふと、アパレルショップの店頭に置かれたマネキンに着せられたアンサンブルが目に止まる。けれど、今はよしておこうと思って通り過ぎようとすると、无限大人が足を止めた。
「見るか?」
「あ、いえ、ちょっと気になっただけで……大丈夫ですよ」
「気になるなら、寄ってもいいだろう」
「そうですか? じゃあ、少しだけ」
无限大人がそう言ってくれるなら、と思うけれど、レディースの店に付き合わせるのはなんだか申し訳ない。でも中に入ってみるとやっぱり好みの服が多かった。
「これ、かわいい」
何着か手に持ってみて、ためつすがめつする。今度来た時に買おうかな。下見をするつもりでざっと店内を見て、外に出た。
「もういいのか?」
「はい。見れましたから。すみません、付き合ってもらって」
「今日は君の好きなところを周ろう」
「えっ……いいんですか?」
「そのつもりで来たからね」
无限大人はのんびりとそう言い、のんびりと歩く。いいんだろうか、そんなこと。私ばっかり、好きなものを見て。无限大人は、退屈じゃないだろうか。无限大人は、何か買い物をしなくていいのかな。不安でいっぱいになるけれど、でも、无限大人がそう言ってくれるのだし。断るのもへんな気がする。なら、いいのかな?
そのあとも、雑貨屋や、小物屋、いろいろと気になるところを見て回った。无限大人がお店を選ぶことはなく、もっぱら私が選ぶばかりだった。やっぱり、ショッピングモールにはあまり興味がないんだろうか。ここを選んだのは失敗だったかな。心配ごとばかり増えていく。せっかく无限大人が誘ってくれたのだから、楽しくしたいのに。難しいな。
「疲れた?」
「あ、いえ、ぜんぜん」
そんなことを考えていたら、顔に出てしまったのかもしれない。そう心配されてしまった。
「あそこで少し休憩しようか」
无限大人はそう言ってカフェを指さした。疲れてはいなかったけれど、休憩を入れるにはいい頃合いだった。そこで、私たちはカフェに入ることにした。