75.猶予
豫園に行くとき、彼女はいつもと少し違う恰好をしていたのが印象に残っていた。パンツを穿いた姿が珍しかった。思い出してみれば、彼女はスカートの方をよく穿いていた。庭園を見ると、以前行った退思園を思い出させた。小黒もそうだったようで、小香と手を…
夢小説 恋ぞつもりて 羅小黒戦記 色も无き花に香りを染めしより
74.瞳に魅入る
「そういえば、深緑さん、どうするか決まったんですよ」「いい場所が見つかったのか?」 お茶を置きながら、无限大人が訊ねるので、首を振った。「いえ。新しい湖へお引っ越しは、なしになりました。やっぱり、知らない場所に行くのは不安が強いみたいです。…
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73.カレーライス
ふと会いたくなって、勇気を出してこちらから誘ってみよう、ということになった。振り返ってみれば、最初にこちらから声をかけて以来、なんだかんだと誘ってもらっていることが多い気がする。ありがたいことだ。なので、こちらから連絡を取るのは緊張する。…
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72.夕焼けに飲み込んだ言葉
存分に泳いで、遊んで、日が陰ってきた。青い空に赤が混じり、風が涼しくなってくる。海からあがり、二人は水着から着替えて、海に伸びた堤防の上をゆっくり歩いていた。小黒はどんどん先に行き、カニかなにかを見付けてしゃがんでいる。「久しぶりにこんな…
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71.波打ち際と砂場
たくさん泳いだので、いったん休憩に浜辺に上がる。二人に飲み物を渡すと、二人そろってごくごくといっぱい飲んだ。上向いてペットボトルの中身を飲む无限大人の喉元につい目が行ってしまう。喉仏が上下して、冷たいお茶を流し込んでいく。髪が濡れて、ぺた…
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70.ポニーテール
「そろそろ着くよ」「はーい」「は、はい」 中でくつろいでいた无限大人が出てきて、小黒が元気に返事をする。私はどきっとしてどもってしまった。 だって、无限大人、今日は髪型をポニーテールにしている。頭の高いところで髪を一つに結び、動くたびに房が…
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69.海へ
潮風にワンピースの裾が広がる。柵に寄りかかって海を眺める小黒の隣に立って、柵に手をついた。「海だね!」「海だね~」 フェリーに乗って50分。東にある舟山諸島のうち舟山島に向かっている。風が強くて、髪がばさばさになるので手で押さえながら、遠…
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68.困ったお誘い
「それで、僕たちは考えましてね……」 館の食堂で、お茶を飲みながら最近親しくなった妖精と世間話をしていた。彼、朝陽さんは人になれないため館で暮らしている。もう数年になるそうだ。折れた耳と犬のように伸びた鼻が特徴だ。「こうすればいいんじゃない…
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67.龍遊石窟
龍遊石窟は公園の中にあった。入口でチケットを買い、道を歩く。途中、ツアーの一行とすれ違った。彼らにとって、漢服の私たちは珍しかったらしく、ちらちらと視線を感じた。民居苑の方はそんなに人がいなかったので気にならなかったけど、やっぱりそわそわ…
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66.龍遊民居苑
雨桐と一緒に買いに行った漢服に袖を通し、鏡の前で入念に確認する。どこか間違ってないか、なんども身体を捻って背中も確認して、そうしていたら約束の時間が近いことに気付いて慌ててポーチを手に取る。これも漢服に併せて用意したものだ。遅刻しちゃう、…
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65.決めた居場所
「今日のところはいいと思うんですよ」 張り切って深緑さんの前に資料を並べようとしたら、深緑さんは待って、と手のひらを翳して私を止めた。「もういいの。今日はそれを伝えに来たの」「もう……って?」 私は深緑さんの顔を覗き込む。あまりに私の紹介す…
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64.外灘
外灘へは三輪タクシーを捕まえて行くことにした。その座席は大人二人が並んで座ると少し窮屈で、小黒は无限大人の膝に収まった。「狭くないか?」「大丈夫です……」 右側がぴったりと无限大人に密着してしまい、心臓の鼓動が聞こえてしまうんじゃないかと…
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