色も无き花に香りを染めしより

75.猶予

 豫園に行くとき、彼女はいつもと少し違う恰好をしていたのが印象に残っていた。パンツを穿いた姿が珍しかった。思い出してみれば、彼女はスカートの方をよく穿いていた。庭園を見ると、以前行った退思園を思い出させた。小黒もそうだったようで、小香と手を…

72.夕焼けに飲み込んだ言葉

 存分に泳いで、遊んで、日が陰ってきた。青い空に赤が混じり、風が涼しくなってくる。海からあがり、二人は水着から着替えて、海に伸びた堤防の上をゆっくり歩いていた。小黒はどんどん先に行き、カニかなにかを見付けてしゃがんでいる。「久しぶりにこんな…

64.外灘

 外灘へは三輪タクシーを捕まえて行くことにした。その座席は大人二人が並んで座ると少し窮屈で、小黒は无限大人の膝に収まった。「狭くないか?」「大丈夫です……」 右側がぴったりと无限大人に密着してしまい、心臓の鼓動が聞こえてしまうんじゃないかと…