35.桃花の夢
薄紅の花が咲き乱れていた。桜とは少し違う気がする。これが桃の花だろうか。「風が出てきたな」 花を揺らしていた風は彼の髪を揺らして吹きすぎていく。 私は彼の横顔から目を逸らせない。細い髪がさらさらと波打ち、光を反射して艶やかに光る。彼は私の…
夢小説 恋ぞつもりて 羅小黒戦記 色も无き花に香りを染めしより
34.刀削麺
「刀削麺を食べたことはあるか」 確か、生地を専用の包丁で削って沸騰したお湯に入れる麺料理だったかと思う。首を振ると、彼はいい店があると言って歩き出した。ここは故宮博物院から少し離れたところにある西四大街だ。レストランがずらりと並んでいる。そ…
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33.紫禁城
「北京だと……やっぱり紫禁城を見てみたいです……!!」 无限大人と二人きり、という緊張感が、北京にいる、という興奮にじわじわと中和されていく。見るべき場所といえばやはり故宮博物院だろう。明や清の時代に皇帝が住んでいたという宮殿。ぜひ、この目…
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32.燕京の館
「では、行こうか」 そう言う无限大人の前には文様が刻まれた壁がある。転送門というのはそういうものだと聞いたことはあるけれど、実際に目にするとこれが門だとすぐには認識できない。「使うのは初めてか」 緊張気味の私に気付いて、彼はそう訊ねてきた。…
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31.求める住処
「湖にお住まいを希望なんですね」 今日訪れた妖精は、ずっと泣き続けていた。黄色いくちばしに、深い青みがかった緑の髪。肌は鱗で覆われている。河童に似ているかもしれない。深緑と名乗った彼女は、ぽろぽろと涙を零しながら言った。「だって、あそこは私…
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30.花盛りの人
朝起きて、端末にお祝いのメッセージが届いていることに気付いた。四文字の短いものだったけれど、彼女は初めてこちらで春節を迎え、楽しんでいるのだな、と感じられて自然と笑みがこぼれた。 その後、館で会った時には驚いた。漢服を着ているとまるで雰囲…
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29.男と女の関係
「小香、小香!」 ちょいちょい、と小声で私を呼んでいるのは誰かと思ったら若水姐姐だった。「写真、いっぱい撮ってきた!?」「はい!」 なぜか部屋の隅に移動し、ひそひそと訊ねてくる若水姐姐に苦笑しながら、端末を取り出す。この前旅行に行ったことは…
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28.君だから
「一回だけだからさ? いいじゃん。行こうぜ」「行かないったら」 少し強い語調の女性の声が聞こえて、足を止める。見ると、欄干に寄りかかるようにして女性の前に立ちはだかっている男がいた。どちらも妖精だ。館の外廊には、二人と、少し離れたところにい…
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27.余韻
旅行の余韻は、なかなか抜けなかった。たくさん撮った写真を見返しては、頬が緩んでしまう。端末に保存していた写真を、何枚かプリントして手元に置けるようにした。三人で撮った写真と、小黒と二人で写っているものと、无限大人一人のもの。以前お寿司屋さ…
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26.身に余るほど
「小香!」 小黒が駆け寄ってきて、腰に抱き着いた。少し驚いたけれど、受け止めて、頭を撫でる。思っていた通り、ふわふわの髪だ。「すまない、目を離してしまって」 その後ろから、无限大人が申し訳なさそうな顔をして謝る。私は慌てて首を振った。「いえ…
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25.退思園
同里古鎮を満喫して、退思園に辿り着いた。ここは清の時代に作られた邸宅の庭園だ。今は一般に解放され、観光地となっている。 とても池が大きくて、まるで水の上に建物が立ってるような、不思議な光景が広がっている。「わあー」 小黒は縁のぎりぎりに足…
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24.同里古鎮
同里古鎮は古鎮というだけあって、昔の建物が多く残っていた。街の中を何本も運河が横切り、その上を舟が進んでいく。「これが太平橋」 橋を渡りながら、无限大人が教えてくれた。「走三橋といって、太平橋、吉利橋、長慶橋を渡ると幸せになれるそうだ」「…
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