03枝飛び遊ぶ小鳥を追いかけて
風息が帰ってきたのを見つけて、木の上から飛び降りる。珍しく早いなと思ったら、珍しいのはそれだけじゃなかった。「おい、まさか……」 風息は二の句をつげないでいる俺を見て、小さく首を振った。 騒ぐなと言われても、それは無理な相談だ。 だって風…
日々燦燦
02暮れる夕日に晴れ渡り
連れてこられたのは、町中にある小さな山の中だった。 急斜面が多く、手入れもあまりされていないようで、人の気配が少ない。そういうところを選んでいるのだと彼は言った。 彼の手から伸びる蔦が、通常ではありえない速さで伸びて、またしゅるしゅると縮…
日々燦燦
01落下速度はご自由に
運が悪かった。 いつも通り用心深く、目立たないように路地裏を選んで進んでいたところだった。 力は使わず息を潜め、影と共に動く。 同族がいればおのずとわかる。先んじてその存在をキャッチし、先手を打って行動できれば見つからずに逃げおおせるのは…
日々燦燦
第一話 迷惑だ、土砂降り女
冬半ばの、寒い日だった。 湿度は49パーセント。の髪は、あまり膨らんでいない。それでもしっとりと湿った表面には丸い水滴がいくつもきらめいていた。 3体。今のところ、が倒した仮想敵の数だ。ちょうど三種類、ポイントは6。試験開始から1分。 そ…
僕のヒーローアカデミア 砂漠に降る涙はやがて
序章
これは、少し前の、もう誰も覚えていない、ささやかな日常の、ささやかな会話の一つ。 繰り返される日々の中で、悲しみや苦しみに押し流され、忘れ去られてしまった記憶の断片だ。 ――水。 それは万物を構成する基本要素。たとえ超常のあと、生物たちの…
僕のヒーローアカデミア 砂漠に降る涙はやがて
第三話 仔
が故郷の森に帰ってきたのは、秋に入ろうという少し風が冷たくなってきた時期だった。 草木の色が少しずつ褪せてきて、瑞々しさが失せ、枯れた冬へ向かおうとしている。 は故郷の空気を胸いっぱいに吸い込んで、忽然として吐き出した。帰ってきた。今はそ…
暗香来
第二話 癒
部屋で書き写しをしていると、誰かが部屋にやってくる足音がして、は手を止めた。「、老君がいらっしゃいましたよ」 が身を寄せている館の館長が、老君を伴って部屋の戸を叩いた。 は筆を置き、戸口まで老君を出迎えに行った。「老君、おいでくださって嬉…
暗香来
第一話 禍
しんしんと降る白い花びらのような雪片が、湖の黒い水面に触れてはしゅんと音もなく溶けていく。冷気を帯びた水滴となった雪片はしゅるしゅると水底に落ちていき、光の届かない薄暗闇で塊となっていく。氷を孕んだ霊力は少しずつ形を大きくしていき、しまい…
暗香来
100.これから
「小香!」 館を歩いていると、後ろから駆け寄ってくる足音がして、振り返る前に腰にどんと衝撃を受けた。少しよろけてから、振り返る。「小黒!」「よかったあ! 戻ってきてくれて!」 小黒は私のスカートを握り締めて涙を目に浮かべていた。私はしゃがん…
夢小説 恋ぞつもりて 羅小黒戦記 色も无き花に香りを染めしより
99.未来へ
唇が触れた瞬間、暖かな想いが胸を満たした。ソファに置いた手に手が重ねられ、そっと包まれる。肩から力が抜けて、身体が彼の方へ傾く。そっと唇が離れ、余韻に身体が微かに震えた。目を開けたら、翡翠の光が目の前にあり、ぼんやりとした私の顔を映してい…
夢小説 恋ぞつもりて 羅小黒戦記 色も无き花に香りを染めしより
98.初めての
「どうぞ、あがってください」 玄関を開けて、靴を脱ぎ、スリッパに履き替える。来客用のものを无限大人に用意して、履いてもらう。こちらでは靴を脱ぐ習慣はないけれど、やっぱり履き替えないと変な気持ちになるのでスリッパを履いている。アパートはまだ新…
夢小説 恋ぞつもりて 羅小黒戦記 色も无き花に香りを染めしより
97.大好きが溢れる
前の家はここを発つときに引き払ってしまったので、また新たなアパートをこの市の中で探して契約した。前の家とあまり変わらないけれど、少し職場に近くなった。无限大人を迎えにいくため、家を出て、駅に向かう。ちょうどいい位置に駅があったので、待ち合…
夢小説 恋ぞつもりて 羅小黒戦記 色も无き花に香りを染めしより