日々燦燦

映画第一弾沿いトリップ夢
夢主:風息に拾われた人間の女の子

  • 01落下速度はご自由に

     運が悪かった。 いつも通り用心深く、目立たないように路地裏を選んで進んでいたところだった。 力は使わず息を潜め、影と共に動く。 同族がいればおのずとわかる。先んじてその存在をキャッチし、先手を打って行動できれば見つからずに逃げおおせるのは…

  • 02暮れる夕日に晴れ渡り

     連れてこられたのは、町中にある小さな山の中だった。 急斜面が多く、手入れもあまりされていないようで、人の気配が少ない。そういうところを選んでいるのだと彼は言った。 彼の手から伸びる蔦が、通常ではありえない速さで伸びて、またしゅるしゅると縮…

  • 03枝飛び遊ぶ小鳥を追いかけて

     風息が帰ってきたのを見つけて、木の上から飛び降りる。珍しく早いなと思ったら、珍しいのはそれだけじゃなかった。「おい、まさか……」 風息は二の句をつげないでいる俺を見て、小さく首を振った。 騒ぐなと言われても、それは無理な相談だ。 だって風…

  • 04水場でひととき羽休め

     目が覚めても、夢は続いていた。 暖かな日差しに穏やかな風、小鳥たちが鳴く声が目覚ましに……というより、普通に騒がしい。鳥がたくさんいすぎる。大自然。「おはよう、!」 そこにひときわ大きく発せられる挨拶。洛竹は朝から元気だった。「腹減ったろ…

  • 05故郷は遠くなりにけり

    「漢字だらけだな……」「、きょろきょろしてるとはぐれるぞ」 通りに並ぶ看板は、どこを見ても漢字ばかり。それも知ってる漢字に知らない漢字が混じってる。やっぱり日本じゃないんだな。 洛竹に声を掛けられて、慌てて駆け寄る。でもやっぱり周りの風景が…

  • 06とんとん拍子とはいかないのが世の理

    「修行といったら虚淮の出番だな!」 買い物から戻ってきて、さっそく虚淮を探す。思った通り、いつもの場所にいた。「おーい、虚淮! ちょっと来てくれよ」 水面に立ち、目を閉じていた虚淮は俺の呼びかけに顔を上げた。 そして、隣のにちらりと目を向け…

  • 07見果てぬ理想郷は彼方

    「私もああいうのできるかなー」 木を使って森の奥へ移動していく洛竹を見て、ぼそりとが呟いた。そういえば、の御霊系は木だったな。「あそこまでは難しいかもしれないが」 修行の成果を見ても、まだまだといったところだ。木を自由自在に操るところまで行…

  • 08雨上がりの泥道に残る足跡の

    「え、どうして?」 風息の言った意味がよくわからなくて、私は戸惑いながら聞き返した。「今日から阿赫のところに行ってもらう」 風息は低い声でそう繰り返してくれたけれど、やっぱりわからない。洛竹も怪訝な顔で風息の肩を掴んだ。「風息、突然どうした…

  • 09分け与えた水は入り交じり永遠に

    「……?」 風息の声が耳元でする。驚いたような声。 風息、私ね、いっぱい考えたの。 風息が言っていたこと、私なりに考えてみたの。 風息、人間のこと、嫌いだよね。 でも、私は……。「!」「ふー……し……?」 がくがくと肩を揺さぶられて、はっと…

  • 10目印めがけて一直線

     目が覚めたとき、部屋はとても暗かった。夜だろうか。 喉が渇いた。 ゆっくりと起き上がると、少し離れたところで誰かが動く音がして、こちらに駆け寄ってくる気配がした。「!?」「洛竹……?」「起きたのか! よかった……!」 洛竹はおでこがくっつ…

  • 11そして車輪は回りだす

     永遠にも感じられる時間が経って、夜になりようやく携帯に連絡が入った。風息からだ、と私は修行を止めて画面を確認する。待っている間やることもないので虚淮に教えてもらったことを思い出しながら修行していたけれど、集中力が欠けているせいか、はたまた…

  • 12あなたの元へ

    「……小黒!」 鳩爺と一緒に移動した先の建物の屋上で小黒を見付けて、私は駆け寄った。小黒を抱えている男性の前に座り込み、その苦悶に満ちた表情を見て、肩から力が抜ける。「生きてる……っ」 生きてる。やっぱり風息は、小黒を殺してなんかいなかった…

  • 13もっと一緒にいたかった

     そこは真っ白な空間だった。 足元には地面があって、前には緑があるけれど、振り返ると、ある地点から何もなくなる。たぶん、何もないというのは思い違いで、霊質が満たしている。空気とは違う、不思議な感覚を肌で感じた。 島では雨が降るように騒いでい…

  • 14名残りを惜しめど雪は消え

    「!」 久しぶりに会った洛竹はちょっとやつれていて、泣きそうな顔をして私の前で立ち止まり、目尻を下げて、声を震わせた。「ごめんな……」 私はただ首を振って、洛竹の服の裾を掴む。涙が零れて、何も話せなかった。しばらく、洛竹は私に寄り添ってくれ…

  • 15エピローグ

     遠くで予鈴の鳴る音がして、私ははっとして目を覚ました。「……あれ」 身体が大きな樹の根っこに挟まっていて、起き上がるのに苦労した。「鞄は?」 身に着けていたはずの鞄がなくて慌てて探すと、根っこから滑り落ちたような位置に転がっていた。とりあ…